社交不安改善コラム

対人恐怖症克服記7 女子高生からの手紙

高校1年生の3月ぐらいになると、赤面恐怖症と笑顔恐怖を併発し、私は一切笑えなくなっていました。この時期、高校生活を揺るがす、ある事件が起こったのです。

100人の女子高生

私の実家は「鷹の台」という駅で、白梅女子高の近くにありました。女子高に近いので、駅に到着するまでに、100人近くの女子高生とすれ違います。思春期の私にとって、本来であれば嬉しい道のはずでした。

しかし、季節は冬です。早朝の冷たい空気を受け、私の顔は真っ赤になっていました。女子高生に赤面を嘲笑されるのではないか?私は気が気ではありませんでした。

おしゃべりに花を咲かす女子たちの笑顔が、
「私を見て笑っているのではないか?」
と感じてしまい、びくびくしてしまいます。私はいつも顔を伏せ、無表情で歩くようにしていました。

 

木の陰にたたずむ女子

ある冬の日、家を出た私は、人気のない、川沿いの道を歩いていました。この道はまだ女子高生ゾーンには差し掛かっていません。私にとって、試練の道に入る前に、心の準備をする場所でもありました。

川沿の道には大きな木がたくさん生えていて、トンネルのようになっています。木の間からは冬の細い太陽の光が差し込み、どこか神々しく、神聖な感じがします。

いつものようにその道を歩いていると、ある違和感を覚えました。15メートルぐらい先に、女子高生がたたずんでいるのです。

 

いつもは誰もいないはずの道なのに・・・
誰かと待ち合わせでもしているのか・・・

私は、途端に緊張してきました。同時に

赤面が見られないか?
かっこよく見えているか?

 

と気が気ではなくなってきました。

 

顔を拝む

私はいつものように顔を地面に向け、表情なく通り過ぎようとしました。ただ私も年頃の男子です。女子高生の顔をどうしても見たくなり、直前にふと顔を上げました。

その女子高生は、肩まで伸びた黒髪で、赤いマフラーをしていました。朝日を浴び、白い息を吐き、冷たい風を浴びて少し顔が赤くなっていました。

何よりびっくりするぐらいかわいらしい子でした。思春期の私の脳が全力で反応しているのがわかります。

 

驚天動地

ただその可愛さは、男子校という地獄で生活している私には実感のないものです。たった3メートルの距離にいても、それは私には到底手に届かない存在なのです。

私は彼女の顔を見た後、えたいのしれないため息をつくと、再び顔を地面に向けて、歩き始めました。静かな早朝です。足音がコツコツと響きます。

そして彼女のほんの1メートル前を通り過ぎようとしたときです、その女子高生がパタパタと動き始めましたのです。

そして‥‥

「あの・・・」

と私に声をかけました。照れくさそうに、はにかんでんでいます。

そして、

「これ・・・」

と言って私に何かを渡したのです。私はあっけにとられ、

「ああ・・・ああ・・・」

とだけ返しました。彼女は足早に去って行きました。

 

あまりにも想定外の出来事でした。テレビでみていたアイドルが、ブラウン管から、突然出てきたような感覚でした。

 

私の脳はパニックになっていました。
いった僕は何を渡されたのだろうか・・・

一刻も早くそれを確かめたくなりました。

 

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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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