高校1年生の頃、初めて女子高生のアスカさんとデートをしましたが、対人恐怖症の影響で緊張し、1時間の散歩で終わりました。
デート後、安堵と共に「会話が盛り上がらなかった」「彼女は楽しめなかった」などネガティブな思考に囚われ、メッセージを送る勇気も持てませんでした。
一方で、彼女からの連絡を密かに期待しポケベルを確認し続けましたが、鳴ることはなく、「フラれた」と思い込み、深い失望を感じました。
最後はポケベルを布団に投げ込み、不運を洗い流そうと風呂に向かいました。
覚悟の確認
風呂に入りながら今日の出来事を思い出しました。
笑顔ではにかんでくれた
禍々しいほどかわいかった
1時間近く歩かせてしまった
会話がなかった
でもだんだんと表情が曇っていた
あきらかな困惑の表情
どう考えても、デートがうまく行ったとは思えません。私は彼女と会えない可能性が高くなっている現状を嘆きました。
1時間近く風呂に入り、頭を抱え続けました。深いため息が風呂場で何度も反響していました。
風呂からあがり、部屋に帰ると時計は0時を指していました。
チャクシンアリ
私は椅子にすわり、じっと布団を眺めました。
その布団の中には「時間」によって熟成されたポケベルがおいてあります。
今日、最後の確認をして返信がなかったら、もうあきらめるしかない・・・
そう覚悟しました。
意を決して、ふとんの奥底にしまいこんだポケベルの画面を見てみました。
緊張が走ります。
画面を見ると
チャクジンガアリマシタ
の文字が画面に写っています。私は目を見開きました!そして脊髄反射をするように、とてつもない速さで中味を確認しました。
キョウハタノシカッタヨ マタアソボウネ
私は狂喜乱舞しました。暗くなった世界がひっくり返り、すっかり返り明るいものになりました。
彼女とまた会うことができる!
先に進むことができる!
嬉しくて仕方がありませんでした。こんなにも景色が変わるのだろうか。こんなにも幸福なことがあっていいのだろうか。
姑息な手段
私はひとしきり幸福を味わい、今すぐにでもアスカさんと、コミュニケーションをしたい衝動に駆られました。しかし、性格悪く、返信はすぐにはしませんでした。すぐに返すとがっついていると思われるからです。姑息です。
私は朝になるともったいつけるように
キノウハアリガトウ マタアソボウ
と返信しました。アスカさんはもしかしたら夜通し苦しい想いをしたかもしれないのに、恋愛弱者の私はそんなことは考えもしませんでした。
ポケベルのやりとりは、その後も続いていきました。私は彼女との関係を進展させていくことができるものと信じて疑いませんでした。
しかし、その恋は、病的なコミュ力のなさのせいで、終わりを迎えることになるのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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