高校1年の頃、私は女子高生のアスカさんから手紙をもらい、1回目のデートに臨みました。1時間井之頭公園をノンストップで歩き続けるという愚行を侵しましたが、どうにか次のデートにこぎつけることができました。
デートを重ねる
幸運にも私はアスカさんと週に1回程度は会うことができました。あれほど恋焦がれた女子との甘い時間・・・これほど幸せな時間はありませんでした。
しかし、私は対人恐怖というハンデを背負っていました。緊張がバレないよう、不細工な顔にならないよう、赤面しないよう、無表情で、感情を押し殺して会うようにしていました。
デートプランはいつも散歩でした。喫茶店に入るという選択肢はなく、ただ公園をぐるぐる歩き続けるというデートを繰り返しました。
告白をすることもなく、手をつなぐこともなく、なんら自分から進展へのアクションをすることはありませんでした。
必然的に、ポケベルは段々と少なくなっていました。
以前はアスカさんから連絡をくれていたのに・・・
私は非常に焦っていました。
残念なプレゼント
そんなある日、アスカさんの誕生日が間近に迫っていることがわかりました。私はこれまでの失態を挽回すべく、プレゼントを渡そうと考えました。女子へプレゼントをするなど人生初めてのことです。
ここで問題だったのが誕生日に何をプレゼントすればいいのか?ということでした。私は中高一貫の男子校に通っていて、プレゼントをしたことなどありませんでした。
記憶を遡るとプレゼントをやり取りしたのは小学生の誕生日会でした。その頃、嬉しかったものは、ミニ四駆、エアガン、ボードゲーム、でした。私は誕生日プレゼントというものはそういうものだと考えていました。
私は女子にはそういった類のものを渡せば喜んでくれにちがいないと考えました。そして、吉祥寺に行き以下の3つのプレゼントを買うことにしました。
・バービー人形
女子は人形をあげると喜ぶとなぜか思い込んでいた私は、古着屋で見つけた「中古の」バービー人形を買いました。今思えば死ぬほど不気味な人形です。
・得体のしれないお香
当時、吉祥寺には怪しげなアジア雑貨屋がたくさんあり、お香が売っていました。なぜか、おしゃれと思い込み買いました。後日、同じものを自分で試したらめちゃめちゃ臭かった。
・少女マンガ
人形、お香・・・これだけだと面白くないかもな・・・私は、仕上げに漫画でも買おうと思いました。当時、「少女漫画の白鳥麗子でございます」が流行っていたので買いました。
私の中では、完璧なポートフォリオを組んだプレゼントを作成したつもりでした。モレなくダブリなく、どれかダメでも、1つは当たりがあると考えていたのです。
私は、丸井で白い大きな紙を買って、赤いリボンをつけて包みました。これならきっと喜んでくれる!と得意満面でした。
崩されるポートフォリオ
いよいよ誕生日になりました。アスカさんに会うと、私はプレゼントを自信たっぷりで渡しました。
アスカさんは
「え~!うれしいありがとう。開けてみていい?」
と喜びそのプレゼントの中身を空けました。
そして、中身を確認した彼女は、
「ありがとう・・・」
と意気消沈した面持ちとなりました。
完璧なるポートフォリオは崩れ去りました。それから、アスカさんからのポケベルはハタとこなくなってしまいました。私は狼狽しました。アスカさんに会いたくてたまらなくなりました。
通学中、女子高生の集団を見ては、アスカさんがいないか?探しました。しかしその姿はありません。
1週間
2週間
アスカさんとは完全に連絡できなくなりました。
そして3週間目のある日、彼女から最後のメールが届いたのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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