社交不安改善コラム

対人恐怖症克服記23  ああ・・・彼女が欲しい

高校時代、対人恐怖症と赤面恐怖症に苦しみ、勉強から逃げ続けた私は、中途半端な受験を経て滑り止めの日大に合格しました。4月になり、いよいよ授業が始まります。新しい環境に胸を躍らす時期ですが、コミュ障であるため大学生活に馴染めるか不安で仕方がありませんでした。

 

彼女が欲しい

私が入学したのは経済学部・経営学科でした。キャンパスには着飾った女子がたくさんいました。不本意な大学入学とは言え、「女子がいる」というのは良いものです。6年間の男子校から抜け出せた感慨深さがありました。

目の前に女子が通ると、さらさらとした髪が、左右に揺れます。5円玉の催眠術を見ているように、陶酔していきます。

なんてかわいい生き物なのだ・・・
ああ・・・彼女がほしい・・・
彼女がいたら幸せだろうな・・・

私の当面の目標は彼女を作ることで頭がいっぱいになっていました。それは対人恐怖という病を上回るほどの欲望でした。気が付けば足のつま先から頭のてっぺんまで、彼女が欲しいという気持ちで満タンになっていました。

 

クラス分け

1年生はクラス制で、40人にわけられることになっています。初日はレクリエーションで指定された教室に集まることになっていました。私は何事も早めに到着するタイプなので、集合時間の20分前ぐらいの教室に到着していました。

着席していると、ゾロゾロとクラスメートが集まってきます。私は、入ってくる男子の数と女子の数をカウントしました。すると思いの他、男子が多く、8対2ぐらいの比率でした。これは少しがっかりしました。

キャンパスを歩いている時はもう少し女子が多く感じたのですが、ただ選択的に知覚をしていただけで、現実は厳しいものでした。自然発生的に彼女ができるとはおもえず、厳しい生存競争が始まる予感がしていました。

 

男子校のハンデ

このままでは、どう考えても彼女ができません。春は新歓コンパが盛んな時期です。私は日大に限らず、他大も含め、女子が多そうなテニスサークルなどに狙いを定め参加しました。

新歓コンパは、新宿や渋谷など大き目のターミナル駅が集合場所であることが多く、その場所にいるだけで圧倒されてしまいます。指定された集合場所に行くと、看板をもったいけいけで自信満々そうな主催者が、立っていました。このようないけいけのタイプは主導権を握られるので苦手です。

メンバーが集まると、飲み会の会場まで移動します。そしていざ目の前に女子が座ると、緊張が全身を駆け巡ります。

不細工だと思われていないだろうか
赤面して恥をかかないだろうか
会話をして失敗しないだろうか

私は「自分がどう見られているか?」に集中し、相手を楽しませる余裕はありませんでした。

困惑した、女子が気を使って質問をしてくれたとしても、すぐに会話が終わります。

「川島君は何が好きなの」

と質問されても

「別に・・・」

もじもじしながら返すのが精一杯でした。当時の私の話題は、日本プロレス、新日プロレス、総合格闘技、カイジ、でした。このような素材で、女子が面白がるわけがありません。私は完全なる地蔵と化してしまいました。

 

チャラ男への羨望と嫉妬

一方で、容姿が優れ、押しが強く、自信満々でノリの良いタイプの男子大学生は、およそ神業とも言えるコミュ力を発揮していきます。

「去年さ~スノボいったんだけど、めっちゃさむくてさ~リフトが止まって全然滑れなかったんだよ~」

「えっ??○○ちゃん達もスノボやるの??マジで??」

「まだ滑れるとこあるから来週、行こうよ!え??来週予定埋まってるの?じゃあ再来週は??」

「まだ予定わからない?んじゃメアド交換しようよ。俺のメアドは・・・」

こんな具合で。ものの10分で次から次へと女の子のメアドをゲットしていくのです。一体全体その自信と、壁の無さは、どこから来るのか謎で仕方がありませんでした。

私はチャラ男への嫉妬と羨望を感じていました。悔しいという気持ちもありましたが、純粋になんてすごい男達なんだと感じていました。同時に彼女が欲しいくせに、女子に心を閉ざす自分が嫌になっていきました。

 

症状の変化

1か月ぐらい経つと、私は段々と集団でのコミュニケーションに嫌気がさしていきました。どのコンパに出席しても、毎回同じパターンで何1つ成果を得られず終わってしまうのです。学習性無力感に苛われ、ついにコンパに出席しなくなっていきました。

大学生活に馴染めないことを悟ると、人と話すことがますます怖くなっていきました。対人恐怖は重症化し、長年悩まされる、深刻な症状が出てきてしまうのです。

 

 

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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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