対人恐怖症の私は、大学3年になり、日大のヒエラルキー中で最上部に属するキラキラしたゼミに挑んだものの、あがり倒してしまい、落選してしまいました。
私は、落選の決断を下した大学生たちを腐しながら、2次募集を探しました。その時目についたのが「マルクス資本論」のゼミでした。
マルクス=やばい
当時の私の知識では、マルクス=共産主義で、なんとなくやばいイメージがありました。マルクス主義に傾倒した国家は、北朝鮮のような国になる!誰も働かなくなって経済が悪化する!よくも悪くもそれぐらいの知識しかありませんでした。
一方で、私が好きだった漫画の一つに「ナニワ金融道」がありました。作者である青木雄二はマルクスが好きで、ことあるごとに、資本論と絡めながら面白い話を作っていました。
私はマルクスを学ぶのも教養の1つになるかもしれないなあ…と考え、軽い気持ちで面接を受けることにしました。
負のオーラ
面接の日になり、私は会場の教室に入りました。前回のゼミと違い、華やかな雰囲気はありませんでした。むしろ陰鬱な空気感が漂っていました。2次面接に来ていた学生は4名だけでした。日大の中でも、やる気のない学生が仕方なく面接に来ている印象でした。
なにせ、この4名は1次面接で全員落選した、出がらしのような学生なのです。パッと見た瞬間、全体的に負のオーラーをまとっているのがわかります。
この負の空気をさらに増長させていたのは間違いなく、対人恐怖症の私でした。おそらく会場の誰もが私の近寄りがたい、暗い空気を感じ取っていたと思います。しかし、人間の心は「類似性の原理」があり、自分と似た人に対しては安心しやすく、好感を持ちやすいという特徴があります。
私は直感的に
「このゼミならやっていけるかも・・・」
と感じていました。
前回のゼミのポジティブでさわやかな空気は私にとって「水清ければ魚棲まず」でした。泥のように沈殿した重たい空気のマルクスゼミの方が居心地が良いと感じたのです。
不毛な面接
いよいよ泥の中で面接が始まりました。前回の面接官とは雲泥の差である、陰鬱な雰囲気の先輩が質問をしてきました。質問に対して、応募者が答える様子を見て、わかったことは、誰一人マルクスには興味がないということでした。
陰鬱な面接担当
「なぜこのゼミを志望したのですか」
陰鬱な応募者A
「マルクス経済学に興味があったのです」
ラーメン屋に来た理由を聞かれ
「ラーメンが食べたかったからです」
と答えるような、すばらしき知性をさく裂させていました。これ以外にも不毛なやり取りは続きます。
陰鬱な面接担当
「なぜこのゼミを志望したのですか」
陰鬱な応募者B
「1次面接で落ちたからです」
どこの世界に、どこにも行くところがないから、仕方なく受けています、というようなニュアンスの人を採用するのでしょうか。その辺の、渡世の常識も理解できないような、すばらしき知性をさく裂させていました。
そして、そのゼミはゼミで、もはやメンバーがいるだけでも上出来という、風前の灯のような人気のなさだったので、結果的に、志望者は、私を含め、全員合格するという、弱者を救う、マルクス主義らしい結末を迎えたのです。
資本論を読み込む
さてこの資本論のゼミですが、結果的にものすごく面白い学びがありました。ゼミではマルクスの代表的な著書である、資本論を読み込んでいきます。
この資本論が、初見では全く持って何を言っているのかわかりません。例えば、こんな調子です。
商品が交換される時、それらの交換価値は、全く、使用価値から独立したあるものであると明らかに示す。我々が見て来た通りである。しかしもし、それらの使用価値を取り去っても、見て来たように、そこには価値が残存する。であるから、商品の交換価値の中に、価値を示す共通なあるものの存在が明らかである。交換されるものはいつでも、その価値なのである。
*出典
https://www.marxists.org/nihon/marx-engels/capital/chapter01/index.htm
はい!なんだかよくわかりません。このような暗号のような文章を解読をして、発表をしていくのです。最初はマルクスが何を言いたいのか?全く分からなかったのですが、学習を続けるにつれて、だんだんと、さわりだけはわかるようになってきました。
そしてこのマルクスの考えは、私の人生に大きな影響を与えていくことになるのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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