社交不安改善コラム

対人恐怖症克服記69 引きこもりフリーターになる

 

15歳の頃から対人恐怖症が始まり、引きこもりとなった私は、心理療法の力を借りて、少しずつ心を回復させていきました。

そして、社会復帰を目指し、アルバイトの面接に臨みましたが、不採用が続きました。

 

テレホンアポインター、ITの派遣会社、携帯電話の定員、スーパーの試食店員、イベントスタッフ・・・結果的に、結果的に、10社の面接を受け、結果は「全て落ちる」という、逆A難度の技をさく裂させていました。

断っておきますが、これは正社員ではありません。

 

時給1000円前後の、アルバイトです。20歳そこそこの若者が、10回もアルバイトの面接に落ちる方が難しいでしょう。面接に落ちるたびに、バイトすら受からないクズ人間と自分を罵りました。

このころはカイジを読んで自分を投影していました。自分の境遇と重なる部分が多く、人一倍共感しながら読んでいたと思います・・・っ!

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認知療法で前向きに

10社連続で不採用になっていたら、以前の私ならおそらく、嘆きのループから自死の危機まで陥っていたと思います。

しかし、10社連続で不採用になっても、私はどうにか精神的に踏みとどまっていました。

それでは心理療法をしっかり実践し続けていたからだと思います。例えば、心理療法の1つに認知療法というやり方があります。

 

認知療法は、「事実」→「解釈」→「感情」という3つの段階で人間は楽しくなったり、落ち込んだりすると仮定していきます。

認知療法を前提とすると、人間が不安になったり、落ち込んだりするのは、「事実」の「解釈」がへたくそであると考えていくのです。

 

「10社落ちた」というのは確かに「事実」です。しかし、この事実を素材として、不幸になるか、幸せになるかは、その事実をネガティブに「解釈」した自分の責任と考えていきます。

私は不採用という「事実」に
・もう誰も僕を採用してくれない
・人生終わった
・価値のない人間だ

と「解釈」していました。しかし、自分と向き合うことで、以下のような解釈を追加していきました。
・無料でコミュニケーションの練習ができた
・緊張は少しずつしなくなってきている
・面接まではスムーズにいける
・会社は10万とある
・あえて対人の仕事を希望しているのだから仕方ない

このように解釈を足していくと、心の回復が早くなっていきました。

 

 

行動療法で着実に成長

潰れずに済んだ心理療法としては、行動療法も挙げられます。

行動療法では、落ち込んだり、自信がなくなるのは、行動のあり方がへたくそである、と考えていきます。逆に言えば、行動をうまくできるようになれば、前向きになることもできるし、自信をつけることもできると考えていきます。

 

例えば、行動療法では、スモールステップで進んでいくことを徹底していきます。私は不採用が続く中でも、行動療法ノートを作り、以下のようにステップを作っていました。

レベル① 挨拶だけはしっかりする
レベル② 背筋を伸ばし続ける
レベル③ 最後にありがとうございましたと言う
レベル④ 自己紹介を顔をあげて30秒する
レベル⑤ 面接の中で相手の会社を褒める

このように、課題を書き出し、1つ1つクリアしていきました。

面接には落ち続けましたが、1つ1つできることが増えていることを確認していました。私は、不採用という結果とは別に、うまく行動できた結果がノートに増えていくことで、自信の種を成長させていくことができたのです。

 

 

そしてフリーターへ

バイトをはじめ、50日が過ぎたころ、KDDIのテレアポのバイトを見つけ、面接を受けました。その日は、自分でもわかるぐらい好調で、堂々と話すことができました。結果は合格でした。

 

勤務場所は、西新宿の高層ビルの44階です。新宿の一等地で働くことは、社会復帰をしたという感覚になることができました。時給も1,200円とバイトとしては高給でした。

 

合格の電話をもらった瞬間、喜びで爆発するかと思いきや、どこか漠然とした現実感のない感覚がやってきました。

合格して無職からフリーターになれて嬉しいという感覚と、社会に出る不安、家から出て他人と話す不安がミックスされ、なんとも言えない感情になっていました。

 

対人恐怖症は軽くなったとは言え、まだまだ症状は残っていました。

しかし、人生を前に進めるには恐怖突入をするしかないのです。私は腹をくくり、いよいよ引きこもりを引退し、社会に出る決心を固めました。

 

しかし、社会への復帰は、一筋縄ではいかず、様々な失敗をやらかすことになるのです。

 

 

 

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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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