対人恐怖症に8年苦しみ、引きこもりになった私は、心理療法の力を借りて、無職からフリーターになることができました。
しかし、会話の力が欠如していたので、職場で孤立し、対人恐怖が再び悪化していきました。
対人恐怖症を克服するには、会話を付けることが必須条件であることに気が付き、そのトレーニング法を探しましたが、肝心のトレーニング法が世の中にないことがわかりました。
腹をくくる
会話は誰しもがするもので、「話せない状態を治す方」は当然あると思っていたのに、これは大きな誤算でした。
私は対人恐怖が治るのであれば、どんな努力でも受け入れて、トレーニングする気持ちでした。しかし、肝心のトレーニング法がないのです。
「あなたの病気を治せる薬はありません」と言われたような、絶望的な気持になりました。
せっかく心理療法で、心の面はある程度、回復して、暗いトンネルを抜けたと思ったのに、再び、暗いトンネルに舞い込んだような気持になりました。
私はひとしきり落ち込むと、
誰も治せないなら自分で研究するしかないのか・・・
と腹をくくりました。
そうして、私は本屋通いを止めて、自分自身でトレーニング法を研究する必要性に迫られたのです。それからというもの、研究をする→休憩室の雑談で試す、という生活を日々繰り返すことになります。
笑っていいとも!を研究
まずはじめに取り組んだのが、笑っていいとも!の研究でした。笑っていいとも!ではテレフォンショッキングというコーナーがあります。テレフォンショッキングの歴史は古く20年も続いていました。

タモリさんは毎回、ゲストを迎え15分程度会話をしていました。ゲストの個性は様々で、お喋りな方もいれば、寡黙な方もいます。それでもタモリさんはいつも見事に楽しく会話をするのです。
私はテレフォンショッキングを研究すれば、会話の原理原則がわかると考え、10本ほど録画し、再生ボタンとストップボタンを押しながら、執念深く文字に起こしました。全部で10万文字ぐらいになりました。
そのあとは、同じような返し方を「分類」して「名前」を付けていきました。
例えば、「自己開示」「質問」「おうむ返し」などです。すべての項目を分類していくと、タモリさんは10種類ぐらいのスキルを使って会話を展開していることがわかりました。
柔軟性が必要
分類が終わるとタモリさんが、それぞれのスキルをどれぐらい使っているかも分析していきました。
例えば、オウム返しについてはかなり頻繁に使っていて、多いときは5分間で15回ぐらいになることもありました。
さらにタモリさんは、それぞれのスキルを単調に使うのではなく、相手のタイプに応じて、柔軟に変えていました。
例えば
相手がよく話すタイプの時
⇒話す量を抑える
寡黙なゲストの時
⇒スキルを多用して会話が止まらないようする
という変化をつけていました。なるほど!会話はこのような原理で成り立っているのか!と勉強になりました。
松本人志の放送局の分析
笑っていいともの分析が終わると、今度は「松本人志の放送局」というラジオを番組の分析をしました。松本人志さんと放送作家の高須光聖さんが1時間近く会話をする番組です。
とても面白かったのでこちらも文字に起こして研究してみました。1時間番組を文字起こしすると、5万文字近くになりました。
タモリさんの会話の構造と違い、2人の場合は、1回の発話の時間が長く、「会話」というより「話」をお互い披露しあうような構造になっていました。同じ会話が続く状態でも、やり方は随分異なるのです。
さらに私は、10番組ほどの会話例を研究しました。すると、自分自身の会話のどこに問題があるかも明確にわかるようになってきたのです。原因がわかると、対処法もわかってきます。
これまでは、なんとなくぼやっと会話をして、すぐに沈黙になっていましたが、解決策も理解できました。すると、不思議なことに対人不安が軽くなった気もしてきました。
あとは練習と実践です。私は「休憩時間」という最高の会話の練習機会を活かして、日々、マダム達と会話をすることになるのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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