社交不安改善コラム

対人恐怖症克服記122 会社員編16 成果主義によって人間関係が壊れる

 

 

引きこもりから脱出し、就職した私は、社長の目の前の席に配属され、充実したサラリーマン生活を送っていました。

日々の業務に完全に慣れ、積極的に発言するようになり、仕事が楽しい時期を過ごしていました。

 

しかし、入社後1年半のある日、独立のきっかけとなる出来事が起こったのです。( この話は内部的な話になるので少しだけ事実と変えて書きます。ご了承ください。 )

 

 

成果主義の導入

 

 

当時、経営上の1つのトピックとして、成果主義の導入がありました。

象徴的だったのが、日産の復活でした。倒産しかけた日産にゴーン社長が成果主義を導入し、V字回復したのです。このインパクトは凄まじいものでした。

 

年功序列が否定され、どの会社も成果主義を検討し始めていました。

私は社長から指示を受け、営業の方の成果を把握できるシステムを創りました。ある程度知識がないとできない仕組みだったので、私はどんなもんだい!という気持ちになっていました。

 

 

利益が出ていない地域 

 

 

成果を見てみると、ほとんどの地域で利益が出ていました。

しかし、九州だけ利益が出ていませんでした。前年対比で、売り上げ40%ぐらい落ち込んでいたのです。それは1ヶ月単位ではなく数ヶ月に渡って続いていることがわかりました。

 

 

九州の担当は木下さんでした。

 

 

社長がその資料に目を通すと、表情が険しくなっていきました。

 

 

「どうして九州だけ売上が下がっているんだ!」

 

 

とイライラしはじめたのです。社長は普段ニコニコしていて人懐っこい性格なのですが、機嫌が悪いときは激しいものがありました。

 

 

 怒りの矛先

 

 

社長はその怒りを木下さんにぶつけ始めました。感情的に怒るのです。木下さんはただ落ち込むばかりでした。

その日から木下さんは毎日にように怒られるようになりました。

 

私は自分が作成した資料のせいで会社内がぎくしゃくし始めたことに、戸惑いを覚えました。

会社を壊してしまったような感覚でしょうか。取り返しのつかない指標を創ってしまった・・・と直観していました。

 

 

青ざめた表情 

 

 

木下さんは誰よりも早く会社に来て、誰よりも遅くまで残業していました。

入社したとき、緊張する私にはじめて声をかけてくれたのも木下さんでした。とっても元気な営業の先輩だったのです。

 

以前は元気に挨拶をしてくれていたのですが、暗い表情PCに向かっている姿ばかりをみるようになりました。木下さんは新婚でした。それでも営業成績を上げようと必至だったのです。

 

やつれた表情は次第に病的な顔に変わっていきました。

表情がなくなり、心を閉ざしてしまっているのがわかります。それはまるで私が引きこもりをしていた時のようでした。

 

  

就職氷河期は経営者が強い

 

 

社長の怒りは2か月程度続き、しまいには怒ることすら辞め、無視をするようになっていました。

当時はまだまだ就職氷河期でした。人材を募集すれば湯水のように高学歴の方が集まる時代です。就職氷河期は経営者が強くなる時期です。

 

そんな中で業績のよい会社はとても力を持っています。

多少強く言っても従業員は会社を辞めたくないから、理不尽な要求も通るような時期でした。

従業員にとってみれば、嫌なことがあっても我慢を強いられる時期でした。

 

 

木下さんの頑張り

 

 

そんな息も詰まるような雰囲気が流れていたある日のことです。木下さんが珍しく自分から社長の机に歩いていきました。そんな姿を見るのは数か月ぶりでした。

 

そして、

「九州地域売上改善計画について企画を練りました。

 目を通して頂きたいのですが・・・」

 

と思いつめた顔で社長に企画書を提出したのです。私は心の中で、ああ・・・木下さんも、必死なんだな・・・木下さん頑張って!とつぶやきました。

しかし、その次の瞬間信じられない光景を目にしました。

 

 

社長はその書類を一瞥するやいなや、その書類を汚いゴミでも見るかのように、投げてしまったのです。

 

 

 

 

 

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・川島達史 1981年生まれ
・公認心理師 精神保健福祉士 心理学大学院修了
・社交不安症専門カウンセラー
・ご相談はこちらからお待ちしています
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