これまでのあらすじ
対人恐怖を発症し、引きこもりとなった私は、トイレすら行けなくなりました。その後心理療法と出会い,どうにか回復しました。
回復後は、半年間フリーター生活をした後、就職活動をしました。2年間、会社員となって仕事をした後、独立する決心を固め、コミュニケーション講座を開講することにしたのです。しかし、実態は起業ニートでした。
対人恐怖症克服記153 起業ニート編3 パワー系講座に突っ込む
未経験の私は結局1年近く、お客様に来てもらえませんでした。挙句の果てに自己啓発セミナーやホームページ業者にボッタクリされ、400万円あった資金は10万円前後まで枯渇してしまいます。
消費者金融まで追い詰められた私は、最後の賭けとしてホームページに資金を投入し続けました。
そこで奇跡が起こり、google検索で、コミュニケーション能力1位を獲得したのです。そしてついに「コミュニケーションで悩んでいます。受講できますか?」というはじめての応募を頂いたのです。
9000円と得体の知れない恐怖心
はじめての生徒さんから応募を頂いた私は、嬉々として、「ぜひお待ちしています!」というご案内のメールを送りました。
その生徒さんはまさか自分が講座第1号だったなんて夢にも思っていなかったと思います。ましてメールの向こう側で私がガッツポーズしているなんて想像すらしていなかったでしょう。
私は丁寧にご案内のメールを送りました。
(本当にありがとうございます・・・)
と感謝の気持ちでいっぱいでした。
そうして、その3日後・・・
ついに9000円の代金を銀行口座に振り込んで頂いたのです。25年生きてきてはじめて、いただいた売上でした。人生はじめての売上は感慨深いものです。多分全ての起業家が忘れられない瞬間なのではないでしょうか。
やっとスタートを切ることができた・・・
じんわりとした喜びに包まれていました。
しかし、通帳を眺めていると、だんだんと自分の中で、得体のしれない恐怖心がどんどん膨らんでいることに気が付きました。その恐怖心はさっきまでの幸福感を十分すぎるほど凌駕するもので、心の中をあっという間に覆いつくしていきました。
生々しい代金
9000円という金額は私にとってとても高額でした。なんせ残り資金10万円しかないわけですから、いきなり資産が10%も増大したのです。通帳に打刻された9000円という数字は強烈でした。
アルバイトをしていたころは、9000円を稼ぐために、10時間近く皿洗いをしなくてはなりませんでした。9000円は何百枚もお皿を洗ってやっと手にすることができたお金でした。
会社員として働いていたころは、会社から「給料」という形でお金をもらっていました。給料はどこかふわふわしたものでした。もちろん嬉しいものでしたが、お客様から直接もらうものではなく、会社から間接的に頂くものでした。
しかし、独立してからは「個人名」で直接振り込まれるわけです。
「ヤマダ タロウ 9000円」
という打刻を見ると、きっと山田さんにとって、この9000円はとても本当に重いお金なんだな・・・とすごく実感しました。
9000円の価値を
生徒さんに提供できるのだろうか?
がっかりされて
講座1回で全員辞めてしまうのではないか
凄く怖くなってきました。
コミュニケーション能力で1位を取ってから、3日に1度程度、申し込みをもらうようになっていました。1人、1人と生徒さんからの応募が続くたびに、嬉しい反面、私の恐怖心はますます増大していきました。
しかし、講座の開催日は刻一刻と迫ってきます。
そして、実際に講座を行うことになるのですが
私は人前に立つことを仕事にする恐ろしさを
これでもかと味わい尽くすことになるのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・公認心理師 精神保健福祉士 心理学大学院修了
・社交不安症専門カウンセラー
・ご相談はこちらからお待ちしています
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