私は高校1年生の冬に、女子高生から連絡先が書かれた手紙をもらいました。しかし、その手紙がきっかけで対人恐怖症が悪化していくことになります。
デートの申し込み
ポケベルのやり取りは1週間ほど続きました。内容はたわいもの無いものでした。夕飯の話や、好きな歌手の話などをやり取りしていました。
そして1週間経ったころアスカさんから
ガッコウカエリ アイタイナ
というメッセージが来ました。
ついに来たか!私は嬉しい反面複雑な心境でした。実際に話してしまうと、彼女の中で作り上げられた私に対する虚像が瓦解してしまうと感じたのです。
赤面症・・・
笑顔が不細工・・・
会話が続かない・・・
こんな男が好かれるわけがないのです。実際に会ってがっかりされるより、彼女の中で誤解されたままでありたいという思いもありました。
しかし、このまま会わない時間が続くのも嫌でした。灰色の男子校生活に終止符を打ちたい!そんな思いも強くなりました。
そして私は意を決して
モチロンアイタイデス イツニシヨウカ
と伝えました。
やり取りはトントン拍子で進み、1週間後に吉祥寺で会うことが決まりました。
感情を殺せばよい
アスカさんと会う日が決まってから、自分の顔の研究に没頭しました。彼女に好かれたい一心で、かっこよく見える自分の表情を模索し続けました。研究の結果、私は
「感情を殺し無表情になる」
という結論を出しました。
赤面するのは
恥ずかしいと感じるから
ならば感情を殺せよい
これで赤面症は抑えられる
不細工な笑顔になってしまうのは
楽しいという感情があるから
ならば感情を殺せばよい
これで整った顔をキープできる
私は鏡を見るたびにそう確信していきました。
無表情の練習
デートの前の数日間、私は感情を殺し、無表情になる練習を繰り返しました。どんなに動揺しても、冷静になるよう心掛け、感情がぶれないように練習をしました。
訓練の成果もあり、私の顔からは表情が消えていきました。ロボットのような無機質で人工的な表情ができあがりました。赤面症も少しおさまった気がしました。
そうしてついに、アスカさんと会う日になりました。集合時間は平日の夕方です。生まれて初めて女子と2人きりで会うのです。私は授業の合間、1時間ごとに自分の容姿をチェックしていました。
自分が相手からどう見られるのか?
私の関心はすべてそこに集中していました。
公的自己意識は最高潮に達していました。
そしてついに学校が終わるりました。
私は
「会いたい」
「逃げたい」
という矛盾した衝動を抱えながら吉祥寺に向かいました。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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