社交不安改善コラム

対人恐怖症克服記126 会社員編20 粘り強さの勝利

 

 

引きこもりから脱出し、就職することができた私は、サラリーマン生活を送っていました。当時私には会計士を目指している彼女がいました。そして合格発表の日を迎えたのです。

 

彼女の番号は1055番でした。 インターネットの画面にかじりつき、緊張しながら、番号を追っていきました。 

 

 

 

 1045

 

 

1048

 

 

1050

 

 

 1055

 

 

 

価値観がひっくり返る

 

 

私はこの数字を見た瞬間、体中が痺れる感覚がありました。この感覚はある種の自己否定でした。それまでの私は「努力しても夢が叶うことはない」という感覚がありました。

 

頑張った会計士試験は落ちてしまった

野球に打ち込んでも結果が出なかった

大学受験も中途半端で結果が出なかった

対人恐怖になってしまい、大学では友達ができなかった

当たり前の青春をすることができなかった

 

 

 

 彼女への投影

 

 

私は彼女にも、夢は叶わないという世界観を投影していました。ダメなものはダメ・・無意識レベルでは合格するわけがない・・・と考えていたのです。

 

私の負け犬根性はそれほど体の奥底までしみ込んでいたのです。きっと結果が出ることはない・・・と言葉にせずとも、信じてしまっていました。

 

しかし、彼女は合格という、疑いようのない事実によって私の価値観を全否定したのです。「頑張ることで結果が出ることがある」。私の無意識に、彼女は新しい価値観を植え付けてくれたのです。

 

 

 

一時の安心感

 

 

実際に彼女に会ってみると、嬉しさより安堵の気持ちの方が大きかったと思います。喜びを爆発させるというより、ホっとした表情でした。彼女らしい態度でした。

 

合格が決まってからは以前よりも会う回数が増えました。いままで行けなかった場所にも出かけるようになっていきました。お互い大変な時期を過ごした人間ですが、この時期だけは安心感のある時期を過ごすことができました。

 

 

 

焦り 

 

 

ただ色々な場所に出かけつつも、私の中には煮え切らない感覚がありました。彼女の苦労が報われ、一緒に喜んでいる自分がいる一方で、ドロドロとした感情が蠢いていることがわかりました。

 

私にとって彼女は恋人であると同時に、自分との比較対象でした。合格し、輝ける未来が約束された彼女と比較して、「このままでいいのか?」という疑問が出始めたのです。

 

「彼女は戦って結果を出した。だけどお前はなんだ?戦ってないよな。」

 

こんな心の声が聞こえてきたのです。彼女は人生を賭けて一つの結果を出した。しかし、私はどこか戦っていない。戦ってもないから負けてもない。勝負すらできていない。

 

 

 

8年、有言不実行 

 

 

彼女は私の中でとても大きな尺度になっていました。スタートラインは同じだったわけです。

彼女は合格という夢を叶えた。しかし、私は独立するという、実体の無い空言によって自らを誤魔化し続けていました。いまだノラリクラリと時間を浪費していたのです。

 

私はもう24歳になっていました。最初に独立をしたいと考えて勉強をし始めてから、8年が過ぎていました。彼女の有言実行さに比べ、自分の嘘つき具合に段々と嫌気が刺してきたのです。

 

自分と戦って、結果を出した彼女

 

戦ってもいない自分

 

努力しても夢はかなわないという思い込みに自動操縦され、行動していない自分。その感情は段々と、大きくなっていきました。そして次第に戦っていない自分への怒りと発展していきました。

 

 

そして、24歳の秋頃、私は人生における重要な決断を下すことになります。そしてその決断により、ある意味で引きこもっていた時よりも先の見えない、どん底を体験することになるのです。

 

 

 

 

 

 

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・川島達史 1981年生まれ
・公認心理師 精神保健福祉士 心理学大学院修了
・社交不安症専門カウンセラー
・ご相談はこちらからお待ちしています
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