独立をしようと会社員を辞めた私ですが、「自分の力で1円も稼いだことがない」というコンプレックスを抱えていました。
このコンプレックスは自営業を目指す人間にとって大きなものでした。
そこで自信をつけるために、まずはフリーマーケットにチャレンジすることにしたのです。数十キロの荷物を無理やり自転車に詰め込み、出発しました。
会場までは2時間かかります。途中好奇の視線を感じ続けました。恥ずかしいという気持ちもありました。
しかし、1円を稼ぎたい!という気持ちが勝っていました。人生が前向きに進んでいる感覚がありました。
閑散とした公園
そうしてやっとのことで公園の入り口に到着しました。
冬にも関わらず体中から汗が噴き出して蒸気していました。さあ・・・!いよいよ出店だ・・・!と気合が入っていました。
しかし、すぐにどこか様子がおかしいことに気が付きました。
その公園はフリマ特有のポジティブな雰囲気が全くないのです。それどころか暗い印象で、どんよりとした雰囲気がありました。
入口から見る限りは、どこにも人影がありません。
疑心暗鬼になりながらも内部に恐怖突入していきました。しかし、進めど進めど、誰一人としてすれ違うことがないのです。
3組のフリマ準備
何かの間違いかな・・・
もう少しだけ探してみよう・・・
私はさらに奥に入っていきました。
すると・・・公園の一番奥のあたりに、3組ほど、準備をしている集団を見つけました。
私が新宿で見たフリーマーケットは100店舗ほど出店する方がいました。人だかりができて活気がありました。
しかし、そのフリーマーケットはたったの3組しか出店準備をしていないのです。新宿のフリマに比べ、あまりにも小規模でした。
コミュニケーションを回避したい
ここで私の対人恐怖心性がむくむくと湧き上がってきました。
というのも100人規模のフリーマーケットでは、いい意味で匿名性があり、隣同士の商店について極めて無関心な雰囲気があったのです。
しかし、3組しかいない・・・という閉鎖的な環境ですと、「コミュニケーション」が発生することは明確でした。
遠目からみるとその3組はなんとなく仲がよさげなのです。談笑しているのがわかりました。もし、かのコミュニティに突入すれば、私のプロフィールの検索合戦がはじまることは明白でした。
普段何されているのですか?
へえ~会社員を辞めたのですか?
独立するのですか?
何をはじめるのですか?
という今最も聞かれたくない質問を受けることは明白でした。
当時の私は、朗らかな雰囲気で雑談する余裕などありませんでした。ぬるぬるとしたコミュニケーションをしたくなかったのです。
対人恐怖が目を覚ます
彼らとのコミュニケーションを避けたい・・・という気持ちが体中を支配するのはあっと言うまでした。
対人恐怖との付き合き方は理解したはずでした(対人恐怖症克服記84 対人恐怖とは克服するものではなかった )。
しかし、起業をして孤独な生活を始始まり、「会社員」という胸を張れる立場がなくなると、かの忌々しい心性が心の奥底から目を覚まし、
「まだ終わってないぞ。一生苦しめてやるぞ」
と人生を邪魔するのでした。まだまだ私はこの気持ちのコントロールができていなかったのです。
そして私は、100メートル先から観察した結果、これはもうだめだ・・・と確信し、わざわざ2時間かけてきたにも関わらず、恐怖に自動操縦され、自らの人生を切り開くこともあきらめ、会場に背を向け、遁走するという愚行を犯してしまったのです。
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・川島達史 1981年生まれ
・公認心理師 精神保健福祉士 心理学大学院修了
・社交不安症専門カウンセラー
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