私は男子校6年間で女性に対する恐怖心を着々と育ててきました。女性と言う生き物と心から交流したことは一度もありませんでした。そんな私にも大学1年の終わりに、ついに橋本さんという彼女ができました。
どっぷりつかる
私と橋本さんは、毎日のように顔を合わせ、一日の大半を一緒に過ごすようになっていました。大学では一緒に講義を受け、ご飯を食べました。放課後は東京の様々な場所に出かけました。東京ドーム、東京タワー、新宿御苑、下北沢・・・・陰キャな2人の癖に夜のクラブにチャレンジすることもありました。
女は一途で、私のことをとても好きになってくれました。連絡をマメにくれて、やさしい言葉をたくさん投げかけてくれました。私は人生で初めて、女性を心から信頼できるようになっていきました。橋本さんと話しているときは全く緊張せず、ありのままの自分をさらけ出すことができたのです。
橋本さんを泣かせる
しかし、付き合いを初めて半年ぐらいすると、私のクズっぷりがだんだんと顕在化してきました。それは「完全に信頼しきってしまう」という状態から起こる共依存関係でした。橋本さんを信頼するという気持ちが過剰になり
この子はいつでも僕のことが好き
何をしても僕の元から離れない
橋本さんにもっと女を磨いてほしい
と感じるようになってしまったのです。このような緊張感の無さから、私は彼女に対して遠慮がなくなっていきました。例えば、彼女は、おとなし目の服装が好きで、セクシーな洋服を好みませんでした。
私は彼女をからかい
橋本さんって地味だよね~
髪の毛真っ黒だね~
こけしみたい笑
と小ばかにしてしまったのです。橋本さんは最初は笑って返してきたのですが、しつこく私が容姿のことを指摘するので、何度か泣かせてしまいました。言い訳をすると、私が通っていた男子校は悪口が、デフォルトな文化でした。
今日もニキビが3つできましたね!おめでとうございます!
今日もダサい服装ですな!おみごとでございます!
おまえなんか今日くさくない?うわ!くさっ!
こんな感じでお互いの顔の悪さや、容姿を貶し合い、お互いからかい合いながら友情を深める文化だったのです。しかし、年頃の女の子の、悪口とじゃれあいの基準は違います。
私は男同士の友情と男女の恋愛の違いが判らず、橋本さんを傷つけてしまったのです。タイムマシンがありましたら、真っ先に当時の私のところに行って、一発ぶん殴ると思います。
今なら素直に言えます!
橋本さんごめんなさい!
今でも反省しています!
橋本さんの決意
このように私は調子に乗ってしまったのですが、橋本さんは我慢強く、私と付き合いを続けてくれました。恋愛については私は満足していました。しかし、私の中では何か釈然としないものがありました。日々自分が成長している感覚がなく、大学生活をふわふわと過ごしている気がしていたのです。
そのような気持ちは橋本さんも持っていました。そして彼女がふとつぶやいたのです。
税理士を目指そうと思うの
この一言から私の人生は、一変し、人が変わったような生活をしていくことになりました。人が変わったような努力ができるようになった反面、奈落の底に落ちていくとは、この時点では知る由もありませんでした。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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