対人恐怖症が重症化した私は、大学4年の冬から引きこもりはじめ、卒業してからも、働くことなく、ニート生活に突入していました。私は、生きる意味を失い、すがるように哲学を読みふけっていました。
そしてソクラテス、ニーチェ、サルトルの教えから「人との関わりの中に幸せがある」という結論に達しました。やっと生きる意味を見つけることができました。
一方で人と関わろうと思っても、依然として私は人が怖い状態でした。人が目の前にいるだけで、汗が噴き出てくるような状態です。どうすれば人が怖い心を改善できるのか・・・どうすれば楽しく人と話せるようになるのか・・・
私は生きる意味を教えてくれた、古本屋に出かけることにしました。
心理学への偏見
店に到着すると、いつものように、閑古鳥が鳴いています。毎回の事ですが、貸し切り状態です。ここまでお客さんがいないと、なんだかこの古本屋は自分のために存在しているのではないかと錯覚を起こしそうになりました。いったいこの店主はどうやって生計を成り立たせているのでしょうか。
私はまずはいつもの「哲学コーナー」に行きました。しかし、哲学コーナーにはコミュニケーションに関する本はありません。私は哲学コーナーから卒業する決心を固めると、ついに他のコーナーへと巣立っていきました。
しばらく冒険したところ、「心理学コーナー」に興味を覚えました。面白そうな本がたくさんあるのです。
心の健康を取り戻そう
うつ病よさようなら
認知行動療法で心が軽くなる
リラックスして話す方法
しかし、私には恥ずかしさがありました。当時の私は「心理学」というものは、短大の女の子が、暇つぶしに、キャーキャー言いながら学ぶものだと考えていました。心理学を学ぶ男など、去勢されたも同然で、かっこよくないと感じていました。例えるなら、コンビニにあるエロ本コーナーを恥ずかしいと思う感覚でしょうか。興味がある癖にそれを見れない。複雑な男心です。
私の中で、抵抗する自分との葛藤がはじまりました。心理学を勉強するなんて恥ずかしいよな…でも面白そうだ…。しかし、好奇心と治療の必要性が勝り、ついには足を止め、22年間で初めて心理学の本を手にとってみたのです。
私は、しばらくの期間、その古本屋で、立ち読みを繰り返し、心理学という分野の分析をし続けました。手に取る癖に何も買わないで帰るため通常であれば、なんらかしらの不快なリアクションがあるのが普通ですが、店主は植物のように無反応でした。
心理療法との出会い
日がな分析を繰返すと、心理学には3つの分野があることが分かってきました。
ミーハー心理学
ミーハー心理学は、科学的根拠のない心理学 深層心理 血液型占い 性格診断 スピリチュアル系 エッセイ本などがあたります。疑り深い精神状態だった私には、スピリチュアル系の本は心にあまり響きませんでした。
学問としての心理学
学問としての心理学は、人間の心理を分析するための基礎的な心理学です。例えば、噂話が広がる仕組み、錯覚してしまう原因、説得する方法など幅広いものがありました。しかし、私は心理学を「勉強」したいわけではなく「自分の心を治療」したかったので、学問としての心理学を学ぼうとは思いませんでした。
心理療法
最後の1つが治療を目的とした心理学で、いわゆる心理療法の分野です。心理療法の目的は人間の心をどのように治療していくかを考えていくものです。 代表的なものに、精神分析療法、来談者中心法、認知行動療法、交流分析、森田療法、絵画療法、・・・などがあることがわかりました。私は心理療法に関する本が、自分にピッタリと確信をしました。
心理療法の本を買い足す
分析が終わり、いよいよ心理療法の本を買う段階になりました。決心を固めると、いつものように軍資金をオヤジの財布から盗み、認知行動療法、森田療法、など心理学の本をひがな買い足していくことになります。そしてこれらの心理療法により、凝り固まった心が徐々にほぐれていくことになるのです。そしてその果てに、考えもしない人生が待っているとは想像すらしていませんでした。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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