重度の対人恐怖症になり、引きこもりとなった私は、人生ではじめて心理療法の勉強をはじめることにしました。最初に取り組んだのは「認知行動療法」です。心理療法のイロハのイで、入門には丁度良いと書かれていました。
醜形恐怖と思い込み
対人恐怖症は様々な心の病気を併発します。私も例からもれず、様々な心の病気で苦しんでいました。特に大きかったのが醜形恐怖症でした。醜形恐怖症とは自分の容姿に対して、強い否定的な感情を持つ心の病気です。
当時の私は、特に「笑顔」にコンプレックスを抱えていました。本来であればにこやかに話したほうが、自分にも相手にもポジティブな影響があります。
しかし、私の顔は頬が膨らみやすく、高校の時に、松井秀喜選手のようだとからかわれたことがあり(松井選手すいません)それ以来、笑顔を気にするようになっていきました。そして気にすればするほど
笑顔になると不細工になる
笑顔になると印象が下がる
笑顔になると嫌われる
このような非現実的な妄想に取りつかれていきました。この症状は高校2年生ぐらいからはじまり、大学入学の頃には何一つ表情を変えず、全くの無表情で人と話す癖がついてしまっていました。
醜形恐怖裁判
認知行動療法を学ぶと、このような「笑顔=不細工」と言った、断定的な考え方は「白黒思考」と呼ぶことがわかりました。白黒思考がある人は、不安や恐怖心を持ちやすく、心の問題を抱えやすいと書いてありました。
認知行動療法を学ぶと、白黒思考がある人は、自分裁判を開いて、検証せよ!と促されます。自分裁判とは要約すると以下のようになものです。
その考えって・・・そもそも真実なの?
その考えってさ・・・証拠はあるの?
証拠がない場合は現実的にしようぜ
もっと健康的な考え方ないの?
私は入門書を片手に、自分の笑顔が本当にブサイクなのか?裁判を開くことにしました。
「笑顔=印象が悪くなる」は・・・真実か?
私は「真顔」と「笑顔」を撮影して検討してみました。真顔だと整っている気がしますが、どこか冷たい印象がありました。笑顔になると、ちょっとブサイクになるのですが、愛嬌がある気がしました。そう考えると、笑顔の方が印象がよくなるという、明らかな気づきがありました。
「笑顔になると嫌われる」は・・・証拠はあるの?
私は笑顔が多かった時期と、笑顔が少なくなった時期について自分の人生を振り返りました。すると笑顔が多い時期のほうが人間関係が充実していたことに気が付きました。
私は、女の子から「笑顔」について直接ブサイクだと言われたことはありませんでした。これに対して「真顔」の時は、川島君は何を考えているのかわからない・・・と言われたことを思い出しました。
裁判結果
裁判の結果、笑顔になると確かに少し顔が崩れますが、不細工と言えるほどではありませんでした。一方で、愛嬌だけを考えると、圧倒的に笑顔の方がプラスでした。何より笑顔を増やした方が人生は前向きになれる気がしました。 最終的に私は考え方を見直すことにしました。
笑顔になると確かに少しブサイクになるけど、
愛嬌が出るし、楽しい気持ちになることができる。
これからの人生は笑顔を増やしていこう
考え方を見直すと、醜形恐怖が少し楽になっている感覚がありました。
笑顔の練習
そこで私は、1日1回笑顔の練習をすることにしました。実際に笑顔の練習をすると、非常に苦戦しました。8年間の思い込みは頑固です。笑顔になるたびに、
ブサイクだ ブサイクだ ブサイクだ
と考えてしまいます。そのたびに新しく作った考え方を何度も唱えるようにしていきました。
笑顔になると多少不細工だけど愛嬌があるよ!
楽しい時は素直に笑顔になろう!
この戦いを何度も繰り返しました。
確かな手ごたえ
結果的に醜形恐怖は3か月程度では治りませんでしたが、重度から軽度ぐらいには改善している感覚はありました。心理療法に懐疑的でしたが、認知行動療法の効果をはっきりと実感することができたので、認知行動療法を継続していくことに決めました。
次に取り組もうと考えたのは「視線恐怖症」でした。私は人の視線を極端に恐れ、目が合うと脂汗が出てくるぐらい緊張するようになっていました。この症状に対しても認知行動療法は効果を発揮することになります。
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・川島達史 1981年生まれ
・社交不安症専門カウンセラー
・公認心理師 精神保健福祉士
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